十二支とは、「子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥」の12の動物たちを指す数え方のこと。今回のテーマはこの「十二支」の由来です。
十二支の由来:12種の身近な動物から
十二支の中でも、牛・馬・羊・鳥(ニワトリ)・豚などは家畜であり、食卓に並ぶような身近な存在ですよね。
古代中国ではこのような身近な動物たちのうち12種類を「十二生肖(じゅうにせいしょう)」と呼びました。これをそのまま十二支に当てはめたため、十二支は12体の動物で表わされるようになったのです。
これらの動物は人間との関わりも深いためか、「縁起が良い」として「伝承」が残されています。まずはそれらの伝承から見ていきましょう。
子(ね)・ネズミ
「ネズミ」を「寝ず身」とかけて、「財を蓄える」として縁起を担いだとされます。
また、ネズミは繁殖力が強く、成熟が早い生き物です。このような特徴から、子孫繁栄や健康を祈ったとされます。
丑(うし)
牛は乳牛・肉牛など食料となるほか、田んぼを作る際に利用されるなど労働力の象徴でした。このように人間社会と密接に関わる重要な生き物だったために十二支に採用されたという説があります。
寅(とら)
トラは中国の神話に登場する「四神(しじん)」のうち一つとされ、東西南北のうち、西を司る神聖な動物とされていました。
また、トラの毛皮はオレンジ色の毛に黒と白のしま模様と美しい模様であり、「星空を表わすもの」と考えられていたとされます。
卯(う)・ウサギ
ウサギは跳躍力に優れている特徴から、「飛躍」のシンボルとされました。ウサギと関係のある月とかけて、「ツキ(幸運)」を呼ぶ動物として親しまれたとされます。
辰(たつ)・龍
トラと同様に「四神」のうちの一つであり、東西南北のうち、東を司る神聖な動物とされます。実在しない生き物であるためか、想定以上の力があると信じられ、「権力者の象徴」とされました。
巳(み)・ヘビ
ヘビが「金運」、脱皮が「永遠」を表わすところから、「繁栄が続く」として縁起が良いとされています。
午(うま)
古来より馬は移動手段であり、重要な存在でした。
行動力やエネルギーを表わすとされています。
未(ひつじ)
羊は群れで行動する生き物であることから、人脈の広がりや、親族の安泰につながるとして縁起が良いとされてきました。
申(さる)
猿は「山の賢者」「山神の使い」として信じられ、親しまれてきました。
酉(とり)
「とり」は「”とり”こむ(取り込む)」とかけて、「商売繁盛」として縁起の良い生き物とされてきました。風水などでは、鳥は「天の遣い」とされ、幸運を運ぶ動物とされます。
戌(いぬ)
犬と人間との関わりは深く、家を守る忠実な「番犬」としての役目を背負うこともありました。そのためか、家の中の邪気を払い、気の巡りを良くすると信じられています。
亥(い)・イノシシ
猪の肉は病気を防ぐと信じられてきました。
実際に「山鯨(やまくじら)」などと呼ばれ、滋養強壮によい食材とされています。このように栄養のある猪は「無病息災」の象徴とされてきたのです。
また、「猪突猛進(ちょとつもうしん)」という言葉があるように「目標に向かってひたむきに走る様子」から、人々のやる気を応援する動物とされてきました。
順番の由来:競争で決めた説が有名
なんでこの順番になったのかは、残念ながら分かっていません。
しかし、順番について様々な伝承・推測を元にした「動物たちの競争」に由来する説は有名です。地域によっては内容にズレがありますが、いずれの説でも以下のポイントは共通しています。
- 神様が動物を集合させ、「着順で12位以内なら、『十二支』という特別な動物に採用するよ」とした
- 猫はその集合日時を忘れ、ネズミに聞いた
- ネズミは猫に嘘の情報を伝え、猫は集合日時に間に合わなかった
- 途中まで牛は1位だったが、ゴール直前で牛の体にしがみついていたネズミが先にゴールした
- 着順は「1位:ネズミ」「2位:牛」「3位:トラ」「4位:ウサギ」「5位:龍」「6位:ヘビ」「7位:馬」「8位:羊」「9位:猿」「10位:ニワトリ」「11位:犬」「12位:イノシシ」となり、以上12種が十二支に採用された
このように、十二支に猫がいない理由は、ネズミにダマされたからとされています。
この伝承は「十二支に選ばれた動物」を説明すると同時に、「猫が十二支に選ばれなかった理由」についても説明する伝承であることが分かります。
こういった伝承があるおかげで、十二支は「覚えやすい」わけですね。
辰(龍)だけ空想上の動物のワケ
十二支の中でも、龍だけ実在しない生き物だよね?全然身近な生き物じゃないと思うんだけど。
それにもちゃんと理由があります。
龍は古代中国人にとって重要な存在でした。
実際に龍は古代中国では神聖な「四神」の一つであり、王の生まれ変わりであると信じられていました。
例え龍が神話の中だけの存在でも、古代の中国人にとって、常識レベルで知名度が高い神獣だったのです。
恐らく龍は「実際に見たことはないけど、どこかに必ずいる存在」という感覚に近いものだったのでしょう。
そういう意味で、身近な存在だったんだね。
十二支はなぜ「12」なのか
なんで「12」なの?別に10とか50とか100とかでも良いと思うんだよね。
その理由、実は「木星」と関係があります。
十二支は古代中国の「木星」の位置の記録方法に由来するとされています。
古代中国では、木星は年を数えるために必要な「歳星(さいせい)」と呼ばれ、重要な星とされていました。そのため、人々は年を数えるために木星の位置を把握する必要がありました。
地球は1年で太陽の回りを一周しますが、木星の場合は約12年の歳月をかけてゆっくりと太陽の回りを一周します。
ゆえに、地球から毎年同じタイミングで木星を見上げると、木星の位置が前の年と異なるという現象が発生します。
12年かけて天を一周するので、12種類の位置が存在しますよね。この12種類の位置をカウントするために作られた数え方が「十二支」とされています。
しかし、この数え方は天文学や占いに精通する専門家ではないと扱いにくい代物でした。
そこで庶民にも利用してもらえるようにと、春秋戦国時代(紀元前453年~前221年)頃に、覚えやすく、動物の名前を当てはめたとされます。
その動物として「ネズミ,牛,トラ・・・鳥,犬,イノシシ」として人間と親しい12の動物を採用しました。
・・・が、先述の通り、この順番で並べた理由は分かっていません。
「競争で順番を決めた説」は有名だけど、あくまでも伝承とか推測の域だったもんね。
干支・十干との違い
まずは意味の確認です。
- 「干支」:本来は「十干十二支」を指すもので、12の動物を指すわけではない
- 「十干(じっかん)」:10をひとまとまりとした数え方で、カウントには「甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸」の10個を用いる
- 「十干十二支」:本来の「干支」のことで、十干(10)と十二支(12)を組み合わせ、60まで数え上げることを可能にした
十干を構成する10単位の読み方は、以下の通りです。
甲 | 乙 | 丙 | 丁 | 戊 | 己 | 庚 | 辛 | 壬 | 癸 |
きのえ | きのと | ひのえ | ひのと | つちのえ | つちのと | かのえ | かのと | みずのえ | みずのと |
これを十二支と組み合わせていくと、1組目「甲子」,2組目「乙丑」,3組目「丙寅」…58組目「辛酉」,59組目「壬戌」,60組目「癸亥」で60通りとなります。
こうして、十干十二支(干支)は60までカウントすることができるわけです。
これを年の数え方に当てはめたときに、60歳で数え終わってまた1に戻ることを「還暦」と呼びます。60歳で還暦を迎える理由は、そもそも十干十二支でも60までしか数えられなかったためです。
十干十二支を2周する(120歳まで生きる)と、「大還暦」となるよ。